魅力にふれる INTERVIEW

1300年の歴史から見えてくる、美濃焼の魅力。

春日美海さんは、「土岐市美濃陶磁歴史館」の学芸員として、美濃焼の歴史に関わる資料の収集、保存、展示を行っています。美濃陶磁歴史館は、桃山時代に織部を焼いた窯として知られる史跡「元屋敷陶器窯跡」が近くにあり、そこから出土した志野や織部などの陶片などを中心に、美濃焼の歴史を伝える展示をしています。今回、美濃焼の1300年の歴史を詳しく知る、春日美海さんにしか語れない美濃焼の魅力についてインタビューをさせていただきました。

どのようなきっかけで美濃焼の世界に入ったのですか?

もともとは東京出身で、昔から焼き物に興味があったのですが、焼き物の産地で本格的に陶芸の勉強をしたいと思い、大学卒業後に、岐阜県にある「多治見市陶磁器意匠研究所」(意匠研)で2年間、陶磁器の技術やデザインを学んだのがきっかけです。その後、意匠研を卒業し、大学で考古学を学んでいたこともあり、その知識を活かして「多治見市文化財保護センター」で学芸員として勤務していました。そして、現在は「土岐市美濃陶磁歴史館」で学芸員を勤めています。

現在はどのようなお仕事をされているのですか?

私が勤めている美濃陶磁歴史館では、これまで窯跡や古墳など、遺跡の発掘調査をしてきていて、数十年にわたる調査による出土品が保管されています。とくに土岐市は、美濃焼を焼いた窯跡が多いので、そこから出土した陶片がたくさん保管されています。発掘調査の成果は「発掘調査報告書」という本にして出版しますが、一般の人には難しいものなので、私は、美濃陶磁歴史館の展示を通して、美濃焼の歴史をなるべく親しみやすく紹介しています。地元の方はもちろんですが、より多くの方に美濃焼の歴史に興味・関心を持ってもらうきっかけをつくることが私の仕事です。

美濃焼の歴史を知ってもらう中で大切にしていることはありますか?

地面の下に埋まっているものは、当時のまま嘘をつかずに埋まっているので、発掘調査の中で当時の歴史がいろいろと見えてくることは面白いですよ。なので、発掘調査の際には、地元の小学生などにも見てもらうようにして、自分たちの住んでいる場所に昔から人が住んでいたことを実感してもらっています。「元屋敷陶器窯跡」は、桃山時代の登窯の跡がそのまま保存されているので、そこに立つと誰もが圧倒される迫力があります。遺跡や出土した陶片など、本物に直に触れてもらい、美濃焼の歴史を少しでも多くの方に感じてもらうことを大切にしています。

今後、美濃焼はどのようになっていくとおもいますか?

私自身は、美濃焼の過去の歴史について調べることを仕事にしているので、未来について直接関わることは少ないですが、地域に埋もれた歴史を掘り起し、それを展示や文章などで紹介することで、地域の人たちに、自分たちの歴史として実感してもらい、その魅力に気づいてもらうことはできると思います。それがきかっけで美濃焼を未来に繋げていきたいという活動を積極的に行っている人たちとも交流し、私の知識を活用してもらえるようになってきているので、私自身、そういった方々を増やすためのきっかけ作りとして、美濃焼の未来について関わっていきたいと思っています。

春日さんが考える、美濃焼の“魅力”とは何でしょうか?

よその人達を排除しないで、誰でも受け入れてくれるところですね。他の焼き物の産地ですと、伝統を守るために閉鎖的なところが多く、外からの方は中々入りづらい雰囲気があるのですが、美濃焼は誰でも受け入れてくれる懐の深さがあるので、そこが他の焼き物にはない美濃焼の魅力だと思います。また美濃焼は1300年の歴史があり、たとえば茶の湯の流行を受けて作られた織部焼のように、その時々の流行を敏感にキャッチして、時代に応じたものを作ってきているので、たくさんの焼き方、種類があるのも美濃焼ならではの魅力だと思います。

オススメスポットのご紹介

元屋敷陶磁器窯跡


この窯跡は東濃エリアで作られた中でも最も古い連房式登窯と言われ、国に指定された史跡でもあります。全長24メートルある階段の下から見上げてもらうと、とても迫力があり、あまりの大きさにきっと圧倒されると思いますよ!

詳しくはコチラ